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続、テロメア

6月19日

人間の細胞にある染色体の端にあるテロメアというDNAの長さが寿命を決めているって本当ですか?

テロメアが本当に生物の寿命を決めているかどうかは、まだ結論が出ていません。ただ、年をとった生物でテロメアが短くなっていることは知られています。テロメアとは何でしょうか?大腸菌のような細菌のDNA(正確には染色体)は環状、すなわち、輪ゴムのような形をしているので、端というものがありません。同じ微生物でも酵母やカビなどの生物から人間に至るまで、そのほかの生物のDNAは直線状で「両端」があります。その両端にあるDNAの配列がテロメア領域です。テロメア領域は主に6個のヌクレオチドの配列の繰り返しでできています。別の言い方をすれば、DNAの鎖の上に音符で言えば6連譜が繰り返し書いてあるということです。ほ乳類ではこの6連譜がなんと千個以上もくり返し、並んでいるのです。

さて、細胞が増えていくときには同じDNAを新しくできた細胞に伝えていきますが、その複製が進んで最後に複製されるのが当然、両端にあるテロメアです。複製は比較的正確に行われますが、どうしてもきっちり最先端まではできないようです。そこで、分裂を重ねるたびに、新しくできた細胞のテロメアは、元の細胞のテロメアより短くなっていくのでしょう。というのが、その仮説です。

それで、たくさん分裂した、すなわち長く生きている細胞のテロメアは長くなっていて、確かにそのせいでDNAの他の部分にも異常が発生しているという発見もあります。ただ、本当にテロメアが短くなったから寿命になっているのかという証拠はありません。

皆さん、ガン細胞は知っていますね。ガン細胞の一つの定義は、寿命がなくなって無限に(条件さえ整えば)分裂できる能力を持った細胞です。それでは、ガン細胞のテロメアはどうなっているのでしょうか?実は、ガン細胞にはうまく複製できなかったDNA末端のテロメアを専門に修理するテロメラーゼという酵素がたくさん見つかっています。このテロメラーゼがテロメアを修理してしまうので、細胞は死ななくなる、すなわちガン化してしますのです。それなら、それがいいって?でも、全部の細胞がそうなったら、たとえばあなたの神経細胞が勝手に増殖をくり返して、全身が神経細胞の塊になってしましますよ。ガン化していない正常細胞にもテロメラーゼはあります。ただし、ちょうど必要な分だけ増殖して、あとはそのままでいるようにうまく調節されているのです。

ここで、もう一つだけ、テロメアとクローン羊の関係をお話しておきます。体細胞クローン羊のドリーのテロメアを調べたところ、まだ生まれたてのドリーのテロメアはすでにだいぶんと短くなっていたそうです。クローン羊を生むために使った細胞は、大人の羊から取った細胞です。大人の羊の細胞は、それまでに分裂した分だけテロメアが短くなっているはずですが、確かにその短くなったテロメアがそのまま、生まれてきたクローン羊に持ち込まれてきた可能性が高いという結果です。それならば、挿し木で増えていく植物のクローンについてはどうなのでしょうか。これも、寿命とテロメアの関係を調べる手がかりを与えてくれるかも知れませんね?

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